ノルマ=「作業の集まり」という視点

 

 私は受験生時代、司法書士試験の学習を「作業」として捉えていました。

 作業として捉えるというのは、「何を(対象物)/どれだけやるか(単位)」という視点で学習内容を考え、こなしていくことです。

 

 例えば、翌日の学習予定を立てるとします。

 少し苦手意識があるから会社法をやりたいなと考えたときに、それではそのまま「会社法を中心にやること」をノルマにするのではありません。具体的に「会社法のテキストの31ページから70ページまでを読むことと、過去問を30問分解くことと、記述式の問題を2問解くことをしよう」というように設定していました。

 この場合、「会社法のテキストを/31~70ページ分」読む作業、「過去問を/30問分」解く作業、「記述式の問題を/2問」解く作業が翌日のノルマになります。

 

 このように、私は学習内容を「勉強」というおおざっぱな枠組みで捉えるのではなく、一つひとつのより具体的な作業に落とし込んで計画を立てていました。

 

 学習内容を一つひとつの作業として捉えることにより、以下の利点が考えられます。

 

1.作業効率の上昇

 

 学習上の予定を立てることは、「予め、自分から自分に対して指示を出しておくこと」と捉えることができます。

 上記の例で言えば、「会社法のテキストの31ページから70ページまでを読むこと」と「過去問を30問分解くこと」と「記述式を2問解くこと」という指示を、前もって(今日の)自分から、明日の自分に対して出しておくこととなり、「会社法を中心にやる」と大まかに捉えることに比べ、よりその指示が特定されます。

 

 指示が特定されることによりどのようなメリットがあるのでしょうか。ここで、自分からではなく、他者からの指示に置き換えて考えてみます。

 

 例えば、仕事で上司から次の2パターンの指示を出されたとします。

  •  「前の打ち合わせの報告書を出しといて」
  • 「前やった今後の方針についての打ち合わせの報告書を、タイトル・要点・今後の課題・出席者・日付を入れてA4用紙1枚の量で、2部印刷して、私の机の上に置いといて」

 

 上記2つの例はいずれも、「決められた書類を上司へ出す」という趣旨の指示ですが、自分がどう動けばいいのか明白なのは後者の方です。(実際、こんな細かく指示を出されることはないかもしれませんが。)そして、このように指示が具体的であればあるほど、「何をすればいいんでしたっけ」などと内容を確認する時間や、本来の意図から外れた行動をするリスクが減ります。

 

 自分から自分に対する指示である学習計画を立てる上でも、「こんな感じの勉強をする」というざっくりとしたものではなく、より具体的な作業として特定することにより、目的意識が一層明確になるので、勉強にとりかかるまでの時間が短縮され、また「本当にこれだけでいいのかな」と自分で決めた学習量や内容に対して迷いが生じることによるロスも軽減されます。

 

 

2.集中力の持続

 一つひとつの作業として捉えることで、学習に対してより展開を感じやすくなります。展開や変化を感じることの影響について、電車での移動を例に考えてみます。

 

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私の考えるノルマのこなし方のイメージ図。勉強という大きな塊(左図)ではなく、作業という一つひとつの小さな玉の集まり(右図)として捉えます。

 

 

 

 例えば、一人旅等で長時間同じ電車に乗って居られるのは、車内の人の出入りや車窓から見える景色等、変化を見てとることができるからではないでしょうか。(スマホや本等の使用を除く)

 これに対して、仮に一人きりでかつ、車内に出入りのない長いトンネルに2,3時間も居続けなければならないとしたら、乗車後数分も経たないうちに早くここから抜け出したいと思うことでしょう。

 

 長丁場と言われる司法書士試験の学習についても同様に、「何時間も『勉強』をし続けなければならない」と考えると、途中で手を止めてしまいそのまま一日を終えてしまったり、仮にその日はこなせたとしても、同じ量を何日も続けてやるというのは中々難しいと感じてしまうのではないでしょうか。

 そうではなく、作業として捉えることで学習に区切りができ、「さっきはこの作業をして、今はこの作業をしている」というように、進捗状況の変化を実感することができる(展開ができる)ので、学習も飽きずに集中し続けることができます。

 

 また、一日の終わりに今日できた作業の確認を行うことで、達成感も得られるので、学習を続ける上でのモチベーションの維持にもつながります。

 

 

 

 司法書士試験の学習では、多くの予備校や講師等から勉強を頑張るのは当たり前と言われます。

 その意見については私も異論はありませんし、試験合格のためにまず土台となるのは気持ちの面や学習量であると私も考えます。

 ただ一方で、その頑張り方や中身ももちろん大切です。考え方や時間の使い方一つで、日々行う学習の質は大きく変わりますし、その積重ねの結果が合否に大きく影響を与えると言っても過言ではありません。

 司法書士試験の日々の学習について、作業効率や集中力の面で問題を抱えている方や、より学習の質を高めていきたいと考えられている方は、こちらの記事で記したような、学習内容を「作業」としてイメージするという見方を試してみてはいかがでしょうか。