考えないで行う作業による集中力の収束

 

 「なんか今日勉強がはかどらないなー」と思うようなときや、途中で集中力が切れてしまい中々スイッチが入らないときは、受験生時代の私にもありました。

 私の場合、そのようなときの対策の一つとして、「頭が働かんときは、手や口を動かせ」と自分に言い聞かせて、以下のような作業を行っていました。

 

 

  • テキストの文章を、考えずにただ声を出して読む(口を動かす)
  • ノートやテキストをただ眺める、文字を辿る(目を動かす)
  • 付箋、インデックスを作る(手を動かす)

 等

 

 

 ポイントは、「考えようとせずに作業する」というところですかね。手・口・目等、頭以外の部分を使い、「勉強する」というよりも、学習に「触れている」という感覚です。

 このように、ただ「触れている」うちに、いつの間にかスイッチが入り、学習に復帰することができるようになっていました。

 考えずに作業をしているだけで、集中力を取り戻し学習に意識を向けることができるようになるのはなぜでしょうか。子どもが言葉を話すことができるまでのプロセスを例に考えてみます。

 

 

 

 

 

 

 

子どもが言葉を話すまでの過程

 

 専門的な見解は諸説ありますが、一般的に下記のプロセスを説明されても大きな違和感はないと思います。(本当にざっくりと、後の説明に必要な部分だけを書きます。)

 

 

①自分の周囲に聴こえる様々な雑音(家の外から聞こえる車の音、家の中で流れるTVや冷蔵庫の音等)の中から、特定の音を捉える

  例 親からの声かけ

 

 

②聞き取り・観察

  呼びかけに反応する

  親の口元の動き等、表情をじっとみる

 

 

③聞いたこと、見たことをまね(ようとす)る

 

 

④自ら発声する

 

 

⑤言葉の認識

 自ら声を発した時の相手のリアクションから、言葉が意思・感情の伝達手段として成立することに気づく 等

 

 

⑥言葉の分別・整理

 言葉のバリエーションが増える。

 「パパ」「ママ」等以外の言葉も意識的に使い分けるようになる。

 

 

・・・

 

 

 

 

 

 細かいことを気にせず書けば、こんな流れかなと。

 

 この例から言いたいことは、次の2つです。

 

 

 

 

 

 

1.無意識でも学習はできている

 

 当然ですが、まだ言葉を発することができない段階の子どもに、「絶対に言葉を話せるようになってやる」という意識はありません。それにも関わらず、自分の目や耳から入った音声や口の動かし方等の情報を頭の中に取り込み、最終的に自らの言葉として表出できるようになります。つまり、ここから、子どもは無意識であっても言葉の話し方を学習していることがわかります。

 

 

 もちろん、物心がつく前であるという成長段階の違いや、認知機能や体の器官の発達途上であることによる情報処理能力や頭の柔軟性の違い等、大人と区別される点は多々あります。しかし、無意識でも学習できるという潜在的な能力については、大人も共通して持っていることと思います。

 

 

 

 

 例えば、鼻歌を歌う行為。

 

 特に好きな歌手であるわけでもないにもかかわらず、CMや入った店でたまたま流れていた曲をいつの間にか口ずさんでいることがあります。ここでも絶対に歌詞を覚えてやろうという意識などなかったはずなのに、曲のメロディやフレーズが頭の中にインプットされ、気づけばある程度歌えるようになっています。

 

 ここから、大人であっても無意識な学びは見てとることができます。

 

 冒頭で挙げた、集中力が切れたときの考えずに行う作業も、後述のとおり、実は学びとしての機能も果たしていると考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

2.関心が高まるほど、集中状態に入りやすくなる

 

 言葉を話す大前提として、そもそも言葉自体に興味を抱かなければなりません。そうでなければ、言葉の存在に気づくことはないからです。

 

 上の例で言えば、興味を抱くきっかけとなるのは、言葉を投げかける親等の存在です。

 

 親等から繰り返し呼びかけられることにより、言葉に気づき、反応します。そして物心がついていない無意識の段階であっても、ここからより注意深く発話者の表情を観察したり声を聞き取とったりすることにつながり、その後の模倣、自分の意思での発話へと続いていくと考えられます。

 

 このように、学習対象となる親との触れあいにより言葉への関心が生まれ、さらに継続的なアプローチを通じて、その関心が高められるとともに、自ずと集中する態勢が維持されるようになっていきます。

 

 つまり、集中に入る前提として、学習そのものに対する興味があります。そして、その興味を向けるために、学習対象(テキストやノート、六法、筆記具等)に触れていることは効果的であると考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無意識的な学習から意識的な学習へ

 

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【無意識的な学習から意識的な学習へ移行するまでのイメージ図】  ①学習対象に触れる(見る・発する・いじる等) ②関心の比重が高まっていく ③散漫だった集中力も、次第に収束していく

 

 

 

 

 ページ冒頭で説明した、集中力が切れたときの考えずに行う作業を通しても、次のように情報の検閲や記憶の喚起は行われると考えられます。

 

 

 

(例)

 テキストのページ記載の文章を読み上げる

  →「留置権やったな~」「この条文長かったな」

 ページに目を通す

  →「このページこれくらいの分量だったな」「この図見たな」

 

 

 

 また、作業を進めていくうちに、次のように、問題意識や関心はさらに深まっていくと考えられます。

 

 

 「次のページどんなこと書いてあるっけ」「次の分野なんだっけ」「留置権の要件な

んだっけ」

 

 →作業の内容である、学習そのものへ意識が入っていく。

 

 

 以上のような流れを通して、OFFからONへと頭のスイッチが切り替わり、いつの間にか学習へ意識を向けられるようになっていくと考えられます。

 

 

 

 

 

 

 頭が働かないときは、頭以外を動かすこと。よろしければお試し下さい。