玉入れ式記述解法トレーニング講座とは―具体例を中心に―

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 緊張していますね。

 掲載の「玉入れ理論導入ガイダンス『記述・不登法で確実に点を取るための着眼点を知る』」(以下、「ガイダンス」)では、私の提唱する玉入れ理論の考え方について中心にお話させていただきました。

 こちらの記事では、現在開講中の「玉入れ式記述解法トレーニング講座」(辰已法律研究所)

玉入れ式記述解法トレーニング講座/司法書士/辰已法律研究所

(以下、「本講座」)について、ガイダンスでは触れなかった点、主にそれぞれの理論に対する具体例や使用教材等を中心にお伝えしていきたいと思います。

 位置付けとしては、ガイダンスが総論で、こちらの記事が各論(の一部)と捉えていただければと思います。

 

目次

1.ガイダンスの超要約

2.玉入れ理論の応用について

3.学力テスト思考について

4.使用教材・講義形式について

 (↑ 項目をクリックすると、そのままリンクへ飛びます)

 

 

 

 

1.ガイダンスの超要約

 本講座では、司法書士試験の不動産登記法記述式(以下、「記述式」)の解法を身につけることを意図しています。捉え方としては、インプット期で学習した知識(民法不動産登記法)を当てはめやすくする・当てはめる分にするという感覚です。

 そして、この「インプットした基礎知識を実際の問題演習で使いこなすことの難しさ」については、多くの学習者が記述式を解くときに体感することではないでしょうか。

 また、ただ単に解くだけでなく、午後科目という限られた時間内に用紙へ解答を書き切らなければならないという点も考慮しなければなりません。

 

 本講座では、こうした問題に対して、「玉入れ理論の応用」と「学力テスト思考」という2つのアプローチから攻略を図ります。(考え方の説明については、ガイダンス参照)

 コンセプトである「速さ」と「正確さ」について、前者については「玉入れ理論の応用」、後者については「学力テスト思考」で対応するように思われるかもしれませんが、私としては双方に関して、それぞれが「速さ」の要素も「正確さ」の要素も含んでいると考えます。

 

 

 

2.玉入れ理論の応用について

 玉入れ理論の応用とは、記述式の作業工程に関する考え方です。具体的に言えば、「細分化した作業を予め決めた段取りに従い行うこと」により効率化を図ります。以下、例をあげて説明します。

 

 本講座では、問題の検討順序を指定します。解く順番としては、ページの先頭に位置するからといって、冒頭の問題文から目を通すわけではありません。まず、大体記述式の真ん中かそれより少し前のページに位置する登記簿(「別紙1」と「別紙2」として示されることが多い)の読取を行い、そしてその後は「別紙の概観」(登記簿以外の各別紙の概要を読むこと)を行う…という具合に指示します。

 登記簿の読取から行うことで、まず起点を確保するという意味をもちます。

ガイダンスでも述べたように、法的判断に至る前段階の、実態を捉えることは学習した知識を当てはめるために非常に重要です。登記簿は言わば不動産の履歴です。記述式で作成する申請書をもとに登記申請を行うことで、この履歴を塗り替えていくことになります。その出発点となる現在の登記簿を最初に把握することで、その後の流れ、つまり線をより正確に辿っていくことができるようになります。

 また、事務所や案件により様々ですが、正式に受任する前に現在の登記簿を入手し確認することは、実務でもよくあります。

 

 もちろん、記載内容すべてに目を通す訳ではなく、時間とその後の作業との兼ね合いから、各資料中最低限目を向けるべき箇所や各段階で行うべき効果的な作業についても本講座では説明しています。

 また、「細分化」ということで、例えば、文中の事実関係の検討に至るまでに、原則5段階の過程を経ます。実際どのようなプロセスとなるかは、講座の内容に入ってしまうこととなるので本記事ではお伝えすることはできませんが、これにより、上述したような「正確さ」と「速さ」を軸とした情報集約を行うことができます。また、こうした考えに基づく時間配分の設定の仕方についても講座内でお話しています。

 ページに捉われるのではなく、あくまで合理的な思考過程に特化した順番で問題を解いていくことで、効率的に無駄なく情報の整理を行うことができます。

 

 

 

 

3.学力テスト思考について

 学力テスト思考についてガイダンス中では、「文章読解(国語)」「SVO+日付(英文法)」「条件の整理(数的処理)」の考え方を説明しています。そのうちここでは、「文章読解」「SVO+日付」の考えについて説明します。具体例は以下です。

 

 文章読解について

 例えば、記述式に関する市販のテキストや講座で挙げられるポイントの一つに、「注意事項の判断に時間をかけてはいけない」といった旨のアドバイスがあります。しかし、実際の演習時には何を基準に判断し、またその際何をすればよいのか具体的にはよくわからないと感じたことのある方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

 ガイダンスで述べた判断基準に従い、本講座内では何をすべきかについて、注意事項や事実関係に関する補足として記載される各項目を1.残す情報 2.消す情報 3.メモしたら消す情報に区分して説明します。そのうち、1.2.については以下の例があります。

 

 消す情報

 「本件の関係当事者間には、【事実関係】及び各別紙に記載されている権利義務以外には、実体上の権利義務関係は、存在しない」(テクニックノートP.33、35)

 

 〔解説〕

 要するに、「この問題に書いていない人や出来事は考えるな」という試験官からのメッセージと解釈されます。問題の構成上特に重要ではないのですぐに消してOK。

 

 

 

 残す情報

 「…答案用紙の第1欄から第3欄までの各項目の欄に…、記載すべき情報等がない場合には、その欄に『なし』と記載すること」(テクニックノートP.36、38)

 

 〔解説〕 

 解答欄の項目中に、記載事項がない時の書き方に対する試験官からの具体的な指示です。この言葉どおりに書かなければなりません。すべての検討作業を終えた後、解答欄を埋めるときに忘れてしまわないように、この段階で「なし」の部分にマーカーを引きます。

 

 

 私が作成した本講座使用教材「テクニックノート」には、これまでの過去問分析の蓄積をもとに、約40の事例について上記のような解説を行っています。ですので、本講座の検討問題で触れた項目はもちろんのこと、直前期に実際ご自身で問題演習を行う際にも、どのように選別すればよいのかテクニックノートを見ながら確認することができるようになっております。

 

 

 

 SVO+日付について

 上述した「別紙の概観」の段階で、例えば売買契約書が別紙として出された場合は以下の点をチェックします。

 

 当事者(買主・売主)・書面のタイトル(「売買契約書」)・不動産の表示(地番または家屋番号の部分)・日付(契約締結日)

 

 それぞれ左からS・V・O・日付にあたります。

 また、この時点で日付の付近に「日=特約?」とメモを残すよう指示します。売買契約書の場合、書面の条項内に所有権移転特約が書かれているケースはよくあります。普段勉強しているときは、この場合の売買による所有権移転登記の原因日付は「売買代金完済日」であると簡単に判断できるでしょう。しかし、本試験の緊張感の中では、同じ書面に記載される「契約締結日」をいつの間にか原因日付とすり替えて問題を読み進めてしまうということもあり得ます。したがって、この時点でメモを残し注意を向ける工夫をすることにより、解答欄へ登記原因日付や申請順序を書き間違えてしまうというリスクも軽減されます。

 テクニックノートには、特に出題されやすい別紙を6種類に集約し、上記のように、各書面のチェックする箇所やこの時点でメモする内容を示しています。

 

 

 

 

4.使用教材・講義形式について

 本講座では、第1回を除き、各回講義前に解いてきてもらう事前検討問題を配布します。講義では、テクニックノートを補助教材として使用しながら、その事前に解いてもらった問題へ、実際に私がペンやマーカーで書き込みながら解説を行うというスタイルをとります。使用教材の説明は以下です。

 

 

・テクニックノート

 その名のとおり、記述式の解法テクニックを記した教材です。

 記述式の問題文中に記載される情報を資料に応じて細分化し(「登記簿の読取」、「別紙の概観」等)、解く順と各検討段階で行うべき作業(チェックする箇所やとるべきメモ等)を説明しています。また、時間配分の考え方まで記載しました。

 

 

・検討問題

 解法の取得を目的としていますが、問題の内容にもこだわりがあります。

 本講座で扱う検討問題は、以下の観点からセレクトしました。

  1.頻出論点である

  2.手続法上の考え方に対する理解度が深まる

 

 1.については当然です。2.については、講座内での論点であるかどうかはさておき、例えば以下の例題につき、次のような判断ができるかどうかは記述式を解く上で重要です。(記載内容以外の詳細は省略)

 

〔例題〕

 甲土地の現在の登記簿は以下のとおりである。

 ここから、平成31年7月5日に甲土地の全部をCが買い受けた場合(同日売買代金全額受領)、どのような登記申請が必要となるか。なお、今回の登記申請にあたり、関係当事者全員から依頼を受けた。

 

(甲土地の登記簿)

 甲区

  順位番号1番  所有権登記名義人 A

  順位番号2番  共有者 持分2分の1 B(A→B 売買による所有権一部移転)

 

 乙区

  順位番号1番  B持分抵当権者 X

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔答え〕

 1件目  平成31年7月5日売買を原因とするA持分全部移転

 2件目  同日売買を原因とするB持分全部移転

  ※1件目、2件目の順番が「B持分…」、「A持分…」でも可。

 

 

 「平成31年7月5日売買を原因とする共有者全員持分全部移転 を1件」は不正解です。ポイントは、乙区1番のB持分抵当権者Xの存在です。今回Cが甲土地の所有権を取得した際、どの持分を目的として第三者の権利(この場合、Xの抵当権)がくっついているかを区別する必要があるため、上記のように解答します。

 記述式を解く上での判断過程としては、登記簿から既に行われた登記の順番や名義人の位置関係・権利関係等を読取り、一方で出された情報を組み合わせながら、既習の知識をもとに最適な申請内容・件数・順序等を判断していかなければなりません。こうした判断を本試験で行う力は、雛型の暗記や単にテキストを読み込み登記申請の型を覚えるだけでは身につきません。

 記述式は、登記申請の流れに対する理解度をはかる試験でもあると私は考えます。したがって、インプット期に学習した基礎知識の定着と同様、手続法である不動産登記法の考え方(申請件数・順序、申請の省略の可否等の判断)に対する十分な理解も重要であり、本講座で扱う問題は全部で3問ですが、問題演習を通して力をつけて頂けるよう吟味しました。

 また、ガイダンスでも触れたように、与えられる情報の配置が異なる等想定外のことが起こったとしても冷静に対処する習慣ができるよう、回ごとの出題形式にも変化が見られます。

 

 

 これから直前期に入りますが、不動産登記法の記述式について、ご自身の解き方を見直したい方や、解法上の重要ポイントを確認し、着実に得点を重ねたい方は是非ご検討下さい。

玉入れ式記述解法トレーニング講座/司法書士/辰已法律研究所

 

 

 

 

 

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