試験開始前にできる意識と頭のウォーミングアップ 【最終回】
受験生時代、本試験当日に特に意識したのは、緊張感と立ち上がりへの対策です。
つまり、余計なプレッシャーをできる限り減らして冷静に問題を解くことと、よりスムーズに集中状態に入っていくためにはどうすればいいかということを考えていました。
答練や模試等で、答え合わせのときは難なく解くことができたが、解答時は文中で言われていること自体がわからなかったため、肢を絞り切れずに間違えたり、後回しにして余計な時間を費やしたりしてしまう等の、単純な知識不足以外の問題もありました。
午前と午後で共通していえることですが、特に解き始めの際の集中状態に入り切れていないことや、時間を意識することによる焦り等を原因とした「文章が読みづらくなってしまう」というリスクは、本番ではより高まるのではないかと考えていました。
こうした問題に対する、あくまで意識レベルのウォーミングアップとして上手くいったかなと思えた本試験当日の対策は、以下の2点です。
1.「さっきの学習の続きからだな」と考えて問題を解き始める
私は、本試験当日も、試験問題を解くこと=「当日のノルマの一環」に近いかたちで位置付けていました。(これは決して、本試験を軽視していた訳ではありません。)
例えば、午前科目の開始前、より具体的に言えば着席する時間がくるまでは、持参した資料(使用テキストやノート等)をもとに、最後の見直しを行うかと思います。私はこの見直し作業を当日の「学習ノルマ①」と捉えていました。そして、開始の合図が出て、実際に試験問題を解く作業を「学習ノルマ②」と位置づけていました。
このように置き換えることにより、いきなり試験問題を解くというのではなく、既に1つノルマを終えていたなと考えることができたので、少し気持ちに余裕を感じることができました。また、私は本試験=あくまで「これまでの問題演習の延長」と捉えていたので、どちらかというと「学習」という括りで考えることにより、これまで決めていた解答時のルール(解く科目や出題形式の順番・時間配分等)を徹底しやすかったかなと思います。
ただ一方で、これはあくまで気持ちを落ち着かせることを目的とした考え方なので、試験は試験モードに切り替えた方がやりやすいというのであれば、そうすべきです。
2.問題用紙表紙の注意事項を要約して読む
着席し、答案用紙への記名等を終えてから試験開始の合図が出るまでは少し時間があるかと思います。私の場合はこの時間を利用して、表紙の注意事項を意識的に自分の言葉に置き換えて読むことにしていました。
例えば、平成30年度本試験について、午前科目問題用紙表紙の注意事項として以下の文があります。
この場合、文章に一通り目を通した後、私は心の中で次のように要約していました。
「要するに、解答の書き方と訂正の仕方を言ってるのね。1問に1個だけ塗って、なおすときは消しゴムでちゃんと消せってことね。」
ポイントは、各注意事項に書かれている文を「要するに…」から始めることです。
コンマ何秒の世界ですが、実際の問題検討の思考過程としても、学習した法律知識や考え方を当てはめる前に、①文を読み、②その文の内容を確認する(つまり、そこで何が聞きたいのか、言いたいのかを把握する)流れがあります。
気休め程度ですが、この要約作業により、上記①→②の頭の働かせ方のいいウォーミングアップになったかなと思います。また、「おっ、読めるな」と確認し、少しリラックスできたことを記憶しています。
考え方や気持ちの置き方一つで自分にとって優位な状況が生まれ、本試験ではそれだけでも他の受験生に比べ大きなアドバンテージになります。
今のうちに緊張等による立ち上がりへの不安を見越して、試験開始前に既に、「あったまった状態で始められる」仕掛けを用意しておくことはオススメです。
来週以降の個別相談について【更新】
※ 6/15 残りの枠状況を更新しました。
(スマホからの更新で斜線が使えないため、現存枠のみ表示しています。)
詳細については、以下のとおりです。
・1枠30分の予約制です。下記の電話番号へご連絡下さい。
・枠状況によっては当日対応も致しますが、事前にご確認頂いた方が確実です。
・当日は、窓口のスタッフへお電話で伝えられたお名前と、司法書士試験の個別相談で
ある旨をお伝え頂ければスムーズかと思います。
対象者
司法書士試験の学習者 又は 学習を検討されている方
・今年度の受験を予定されている方がメインにはなりますが、来年度以降の受験を予
定されている方や、これから司法書士試験の勉強を始めようか迷っている方でもか
まいません。
・独学者の方や、辰已法律研究所以外の予備校を利用されている方からご質問を頂く
ことの方が(なぜか)多いので、そういった方も是非ご利用下さい。
・学習内容以外についてもご自由に質問して頂いて結構です。
例 今後の予定や学習上の優先順位の確認、モチベーションの維持方法 等
・ただし、例えば具体的な学習方針等、内容によっては学習効果の観点から「この点
については、(このように)担当講師に確認してみてはいかがですか」等とお伝え
する場合もあるということはご了承下さい。
場所・連絡先
辰已法律研究所 名古屋本校
TEL 052-588-3941(代表)
地図→ https://www.tatsumi.co.jp/info/guide_nagoya3.html
日時
6/20(木)
① 11:00 - 11:30
② 11:30 - 12:00
③ 12:00 -12:30
④ 12:30- 13:00
6/30(日)
① 11:00 - 11:30
② 11:30 - 12:00
③ 12:00 -12:30
④ 12:30- 13:00
心の整理の仕方 ―考える価値のあることをやる―
考える価値のあることをしましょう。
考える価値のあることとは、時間や労力を費やすほど、大きな見返りを得られるようなことです。受験生の方々にとっては、『合格』という大きな見返りに直接結びつく学習のことを指します。
冷たい言い方ですが、自分以外の他人や、過去の出来事等の事実は変えられません。
そういった考えてもしょうがないことに気を取られて、貴重な時間を台無しにしてしまうのは本当に勿体ないことです。
「今、ここ」に集中しましょう。
とはいえ、一度思い浮かべてしまった苛立ちや悔しさ等のいわば負の感情について、気持ちを鎮めることは中々難しいです。そのようなときは、そのネガティブな感情をエネルギーに変え学習の糧にしていきましょう。
ただ、それでも振り払えずに気持ちを引きずってしまうようなら、次のように、引きずったままでもできることを増やしていきましょう。
気持ちを引きずったままでもできることを増やす
先に、気持ちを引きずったままでもできることを増やすことによる意識の変化について、以下のとおり引っ越しを例に考えます。
例えば、線路の近くや車通りの多いところに引っ越したとします。
暮らし始めたころは、気になって仕方のなかった電車や車が通る音等の騒音も、実際にそこに身を置き多くの活動をしていくうちに、また日が経つにつれて、生活する上で特に支障を感じなくなっていきます。
この例のように、いやな気持ちを引きずってしまうという、いわば「自分にとって好ましくない状況」の中でも、その状態のまま、できることを少しずつ増やしていきます。
その結果、いやなことを思い出してしまったとしても、次第にその状況は、学習する上では特に支障のないことであると思えるようになってくる(頭に刷り込まれていく)効果があると考えられます。
要するに、意識の中で場慣れしていく感じです。
考え方の手順
1.イヤなことを思い出してしまい、どうしても気持ちを切り替えることができないなと感じる。
2.まず「切り替えられないこと」を受け入れる。かつ、その状態を維持したままで行うことを決める。
例 テキストを1ページ読む、申請例雛型1つ音読、過去問1問解く
※ポイント
・作業量は少量。どれだけ時間がかかってもいいので、やり切る。
・「決めた量」をこなすことを最重要視するため、出来映え(クオリティー)は気にしない。
3.2で決めたことをやり終えたら、一旦心の中で自己評価する
例 「気持ちを引きずった状態でも、1問解くことができた」ことを確認する。
※次からは、2の量を少しずつ増やす。
例 1ページ→2ページ、1つ→2つ、1問→2問
効果
・気持ちを引きずったままでもできるということを自分に発見させられるため、モチベーションの維持につながる。
・徐々に(いきなりは×)量を増やすことで、やるべきこと(学習)に対する関心の比重が高まり(※)、いやなことを思い出してしまっても、意識が学習に移行しやすくなると考えられる。最終的には、いやなことを思い出しても、瞬時にスイッチを切り替え、学習に集中できるようになっていくと考えられる。
※ 関心の比重についてのハナシは、下記記事でも触れています。
考えないで行う作業による集中力の収束
「なんか今日勉強がはかどらないなー」と思うようなときや、途中で集中力が切れてしまい中々スイッチが入らないときは、受験生時代の私にもありました。
私の場合、そのようなときの対策の一つとして、「頭が働かんときは、手や口を動かせ」と自分に言い聞かせて、以下のような作業を行っていました。
- テキストの文章を、考えずにただ声を出して読む(口を動かす)
- ノートやテキストをただ眺める、文字を辿る(目を動かす)
- 付箋、インデックスを作る(手を動かす)
等
ポイントは、「考えようとせずに作業する」というところですかね。手・口・目等、頭以外の部分を使い、「勉強する」というよりも、学習に「触れている」という感覚です。
このように、ただ「触れている」うちに、いつの間にかスイッチが入り、学習に復帰することができるようになっていました。
考えずに作業をしているだけで、集中力を取り戻し学習に意識を向けることができるようになるのはなぜでしょうか。子どもが言葉を話すことができるまでのプロセスを例に考えてみます。
子どもが言葉を話すまでの過程
専門的な見解は諸説ありますが、一般的に下記のプロセスを説明されても大きな違和感はないと思います。(本当にざっくりと、後の説明に必要な部分だけを書きます。)
①自分の周囲に聴こえる様々な雑音(家の外から聞こえる車の音、家の中で流れるTVや冷蔵庫の音等)の中から、特定の音を捉える
例 親からの声かけ
↓
②聞き取り・観察
呼びかけに反応する
親の口元の動き等、表情をじっとみる
↓
③聞いたこと、見たことをまね(ようとす)る
↓
④自ら発声する
↓
⑤言葉の認識
自ら声を発した時の相手のリアクションから、言葉が意思・感情の伝達手段として成立することに気づく 等
↓
⑥言葉の分別・整理
言葉のバリエーションが増える。
「パパ」「ママ」等以外の言葉も意識的に使い分けるようになる。
↓
・・・
細かいことを気にせず書けば、こんな流れかなと。
この例から言いたいことは、次の2つです。
1.無意識でも学習はできている
当然ですが、まだ言葉を発することができない段階の子どもに、「絶対に言葉を話せるようになってやる」という意識はありません。それにも関わらず、自分の目や耳から入った音声や口の動かし方等の情報を頭の中に取り込み、最終的に自らの言葉として表出できるようになります。つまり、ここから、子どもは無意識であっても言葉の話し方を学習していることがわかります。
もちろん、物心がつく前であるという成長段階の違いや、認知機能や体の器官の発達途上であることによる情報処理能力や頭の柔軟性の違い等、大人と区別される点は多々あります。しかし、無意識でも学習できるという潜在的な能力については、大人も共通して持っていることと思います。
例えば、鼻歌を歌う行為。
特に好きな歌手であるわけでもないにもかかわらず、CMや入った店でたまたま流れていた曲をいつの間にか口ずさんでいることがあります。ここでも絶対に歌詞を覚えてやろうという意識などなかったはずなのに、曲のメロディやフレーズが頭の中にインプットされ、気づけばある程度歌えるようになっています。
ここから、大人であっても無意識な学びは見てとることができます。
冒頭で挙げた、集中力が切れたときの考えずに行う作業も、後述のとおり、実は学びとしての機能も果たしていると考えられます。
2.関心が高まるほど、集中状態に入りやすくなる
言葉を話す大前提として、そもそも言葉自体に興味を抱かなければなりません。そうでなければ、言葉の存在に気づくことはないからです。
上の例で言えば、興味を抱くきっかけとなるのは、言葉を投げかける親等の存在です。
親等から繰り返し呼びかけられることにより、言葉に気づき、反応します。そして物心がついていない無意識の段階であっても、ここからより注意深く発話者の表情を観察したり声を聞き取とったりすることにつながり、その後の模倣、自分の意思での発話へと続いていくと考えられます。
このように、学習対象となる親との触れあいにより言葉への関心が生まれ、さらに継続的なアプローチを通じて、その関心が高められるとともに、自ずと集中する態勢が維持されるようになっていきます。
つまり、集中に入る前提として、学習そのものに対する興味があります。そして、その興味を向けるために、学習対象(テキストやノート、六法、筆記具等)に触れていることは効果的であると考えられます。
無意識的な学習から意識的な学習へ
ページ冒頭で説明した、集中力が切れたときの考えずに行う作業を通しても、次のように情報の検閲や記憶の喚起は行われると考えられます。
(例)
テキストのページ記載の文章を読み上げる
→「留置権やったな~」「この条文長かったな」
ページに目を通す
→「このページこれくらいの分量だったな」「この図見たな」
また、作業を進めていくうちに、次のように、問題意識や関心はさらに深まっていくと考えられます。
「次のページどんなこと書いてあるっけ」「次の分野なんだっけ」「留置権の要件な
んだっけ」
→作業の内容である、学習そのものへ意識が入っていく。
以上のような流れを通して、OFFからONへと頭のスイッチが切り替わり、いつの間にか学習へ意識を向けられるようになっていくと考えられます。
頭が働かないときは、頭以外を動かすこと。よろしければお試し下さい。
直前期からの玉入れ式記述解法トレーニング講座の活用について
「玉入れ式記述解法トレーニング講座-不動産登記法編-」(以下、「本講座」)について、第1回目の講義の一部が公開されています。
(↓動画はこちら)
『【初回無料体験動画】玉入れ式記述解法トレーニング講座』 (羽田野 高臣先生) [司法書士]
(↓辰已法律研究所さんのページはこちら)
https://www.tatsumi.co.jp/shihou_shosi/tokusetu/190316-tamaire/
本講座については、過去の記事でも詳しく紹介しています。
(下記紹介記事では、ガイダンス動画や講義のすすめ方、解法の核となる「玉入れ理論の応用」や「学力テスト思考」の考え方とそれぞれの具体例等を掲載しています。)
一方、こちらの記事では、タイトル通り本講座の直前期からの活用についてを中心にお話します。
(↑クリックすると、直接リンクへジャンプします)
1.本講座の受講生の方
直前期の利用方法については、第3回の講義でご案内した通りです。そちらに従って下さい。
2.本講座の受講を検討中の方
直前期に入り、答練・模試等記述式の問題演習の機会が増えていく中で、時間配分等の知識面以外の部分に対する意識もより高まってきていることと思います。
そうした中、学習した知識が思うように当てはめられない方や、ページの行き来に手間取ってしまい時間調整が上手くいかない方、問題検討時の論点の見落とし、検討後に解答欄を埋めるまでの間に記載漏れをしてしまう等情報の整理・集約に問題を抱えている方は、是非ご受講下さい。本講座では、論点の抽出方法や凡ミス対策は特に重視しています。
また、そもそもこの時期から受講して間に合うかという疑問に対しては、十分間に合うとお答えします。理由は以下のとおりです。
理由1 講座のコンセプト
下記動画でもお伝えしたとおり、直前期の学習方針は、既存の知識を磨くことであり、新たなインプットを行う時期ではありません。
『今日から始める直前期スケジュール設計&問題演習の考え方』 (羽田野高臣先生) [司法書士入門]
講座のコンセプトが申請例の雛型を新しく覚えることや、追加で少し細かい手続法上の条文や論点を習得する等、つまりインプットに重点があるようならこれから受講されることは難しいかもしれません。
しかし本講座では、ページ冒頭の動画やガイダンスでもお伝えしたとおり、既に学習した知識を応用しやすくすることを目的としているので、その点は問題ありません。それどころかむしろ、基礎知識の精度が高められていくこの時期に受講して頂くことで、より学習の効果が発揮されていくと考えます。
理由2 講座で使用する問題の選択基準
本講座で使用する検討問題は、合計3題あります。各問題につき、講義時の使用教材用と復習用の2冊ずつ配布されます。問題の選択基準は下記ページに記載のとおりです。
(↓クリックして頂くと、直接触れている部分へジャンプします)
要するに、直前期でもう一度解くことを念頭に入れて問題をセレクトしています。そして、記述式の土台となる基礎知識の精度が高まっていくこの時期に、本講座を受講していただくことで解法の定着も促進されると考えます。
さらに、受講後の利用方法についても講義でお伝えしていますので、解法のインプットからアウトプットへの移行もスムーズに行って頂くことができます。
理由3 学習に負担のない講義設計
本講座の講義は、1コマあたり約1時間半の合計3コマです。各回の学習方法については、予習として事前に配布される検討問題を解く(第1回については除く)→講義で私が手順やテクニックを説明しながら問題の解説を行う→復習として扱った問題(講義中書き込んだことや、必要に応じてテクニックノートの該当部分)を見直すという流れです。
本試験相応の情報量の問題について、各回1題を1時間半で講義を行います。しかし、この時間中に、それぞれの回で学ぶテクニックを身につける範囲で、問題検討から答案構成用紙の作成、そして解答欄の確認までを講義で行います。さらに、各検討段階での「解く順・視点・メモのとり方」について、私が実際の講義やテクニックノートで具体的に指示します。
このように、スケジュールは最小限である一方で、中身は濃いものを提供しています。また、各検討段階・学習段階について「何を、どのようにすればいいのか」を可能な限り明確に指示しています。
一分一秒も惜しいこの時期であっても、学習にかける時間や労力も最小限で済む工夫をしています。
不動産登記法の記述式について、解法が定まっていない方や、ご自身の解法の見直しを検討されている方は是非ご受講下さい。
直前期の講義についての動画が一部無料公開されています
4月7日に実施した直前期の過ごし方についての講義の一部が、YouTube上で公開されています。(公開されていない部分ついては、ページ下部に案内があります。)
(動画はこちら↓)
『今日から始める直前期スケジュール設計&問題演習の考え方』 (羽田野高臣先生) [司法書士入門]
こちらの講義に関する全体の流れについては、下記記事でも紹介しています。
公開部分について
動画内では、学習内容を作業として考え、重点的に行う作業内容の違いから直前期とインプット期を区別しています。
講義の軸となる、この「学習を作業として捉える」という考えは、下記記事で詳しく述べています。
また、スケジュールをスポーツとしてイメージするという考え方は、以前Twitterでもつぶやいたとおりです。
直前期のスケジュールは、スポーツに例えるのも一つの見方です。
— 羽田野高臣 (@TakaomiHadano) 2019年4月3日
本試験→公式戦
答練・模試→練習試合
他の勉強→日々のトレーニング
「調整していく」という視点から、演習の位置づけや日々の過ごし方への意識も変わってきます。
一番上の紹介記事では、講義内容として直前期に関して次の3つを案内しました。
1.スケジュール設計
2.問題演習
3.意識
今回公開されているのは、実際に行った講義の中でも、そのうち1の途中の部分までです。
1の考え方について、私は直前期を次の3つに区分し説明しています。
Ⅰ 直前期(本試験までの残り日数から、次のⅡとⅢを差し引いた期間)
Ⅱ 最終確認期(試験前日からその約1週間前までの期間)
Ⅲ 本試験当日
動画では逆からⅡとⅢについて説明しているので、具体的には、多くの方々にとってちょうど現在の時期にあたるⅠの途中の部分までが公開されています。
こちらの動画の続きは、下記URL内の案内を参考に、有料でお申し込み頂いた方がご視聴頂けます。
(視聴期限は今年の7月7日まで。ご購入された方は、PDFでレジュメをご覧になることができるそうです。)
(↓クリックすると、辰已法律研究所さんの案内ページに飛びます)
https://tatsumi-ws.com/items/?code=18GCQE
折角なのでこの記事では、動画の続きについて少しだけ触れさせて頂きます。
あくまで部分的にですが、以下のような内容をお話しています。
・スケジュール設計についての続き
動画内ではスケジュールの立て方について、ファーストステップとして作業全体を把握するまでの部分が公開されています。この動画の続きの部分では、セカンドステップとして、学習内容によって、固定日を設ける作業と設けない作業の考え方、そしてサードステップとして、実際のスケジュールの当てはめ方についての計算式を説明しています。
また、立てるだけでなく、「つづける」という視点から、どのようにノルマをこなしていくかについて図示しながらお話しています。
・問題演習、意識について
本試験を想定した模試・答練・過去問等の問題演習のテクニックとして、選択肢のつぶし方や、イレギュラーな問題(見慣れない出題形式、肢の全部または大部分が知らない論点の場合)が出たときの対応方法について、実際の過去問に線や記号を書き込みながら説明しています。
最後に、本試験までの残りの期間を有効に使うため、学習する際の意識面での注意点や、本試験までモチベーションを維持しながら学習をつづけるための心の整理の仕方等についてお話しています。
私は受験生時代、試験前日は学習を半日で切り上げ、残りの時間はオフにして本番に挑み、一発合格を勝ち取りました。
公開されていない部分でもお話している、本試験への気持ちの持っていき方については、多くの受験生の方々にとって大いに参考にして頂けるかと思います。
ノルマ=「作業の集まり」という視点
私は受験生時代、司法書士試験の学習を「作業」として捉えていました。
作業として捉えるというのは、「何を(対象物)/どれだけやるか(単位)」という視点で学習内容を考え、こなしていくことです。
例えば、翌日の学習予定を立てるとします。
少し苦手意識があるから会社法をやりたいなと考えたときに、それではそのまま「会社法を中心にやること」をノルマにするのではありません。具体的に「会社法のテキストの31ページから70ページまでを読むことと、過去問を30問分解くことと、記述式の問題を2問解くことをしよう」というように設定していました。
この場合、「会社法のテキストを/31~70ページ分」読む作業、「過去問を/30問分」解く作業、「記述式の問題を/2問」解く作業が翌日のノルマになります。
このように、私は学習内容を「勉強」というおおざっぱな枠組みで捉えるのではなく、一つひとつのより具体的な作業に落とし込んで計画を立てていました。
学習内容を一つひとつの作業として捉えることにより、以下の利点が考えられます。
1.作業効率の上昇
学習上の予定を立てることは、「予め、自分から自分に対して指示を出しておくこと」と捉えることができます。
上記の例で言えば、「会社法のテキストの31ページから70ページまでを読むこと」と「過去問を30問分解くこと」と「記述式を2問解くこと」という指示を、前もって(今日の)自分から、明日の自分に対して出しておくこととなり、「会社法を中心にやる」と大まかに捉えることに比べ、よりその指示が特定されます。
指示が特定されることによりどのようなメリットがあるのでしょうか。ここで、自分からではなく、他者からの指示に置き換えて考えてみます。
例えば、仕事で上司から次の2パターンの指示を出されたとします。
- 「前の打ち合わせの報告書を出しといて」
- 「前やった今後の方針についての打ち合わせの報告書を、タイトル・要点・今後の課題・出席者・日付を入れてA4用紙1枚の量で、2部印刷して、私の机の上に置いといて」
上記2つの例はいずれも、「決められた書類を上司へ出す」という趣旨の指示ですが、自分がどう動けばいいのか明白なのは後者の方です。(実際、こんな細かく指示を出されることはないかもしれませんが。)そして、このように指示が具体的であればあるほど、「何をすればいいんでしたっけ」などと内容を確認する時間や、本来の意図から外れた行動をするリスクが減ります。
自分から自分に対する指示である学習計画を立てる上でも、「こんな感じの勉強をする」というざっくりとしたものではなく、より具体的な作業として特定することにより、目的意識が一層明確になるので、勉強にとりかかるまでの時間が短縮され、また「本当にこれだけでいいのかな」と自分で決めた学習量や内容に対して迷いが生じることによるロスも軽減されます。
2.集中力の持続
一つひとつの作業として捉えることで、学習に対してより展開を感じやすくなります。展開や変化を感じることの影響について、電車での移動を例に考えてみます。
例えば、一人旅等で長時間同じ電車に乗って居られるのは、車内の人の出入りや車窓から見える景色等、変化を見てとることができるからではないでしょうか。(スマホや本等の使用を除く)
これに対して、仮に一人きりでかつ、車内に出入りのない長いトンネルに2,3時間も居続けなければならないとしたら、乗車後数分も経たないうちに早くここから抜け出したいと思うことでしょう。
長丁場と言われる司法書士試験の学習についても同様に、「何時間も『勉強』をし続けなければならない」と考えると、途中で手を止めてしまいそのまま一日を終えてしまったり、仮にその日はこなせたとしても、同じ量を何日も続けてやるというのは中々難しいと感じてしまうのではないでしょうか。
そうではなく、作業として捉えることで学習に区切りができ、「さっきはこの作業をして、今はこの作業をしている」というように、進捗状況の変化を実感することができる(展開ができる)ので、学習も飽きずに集中し続けることができます。
また、一日の終わりに今日できた作業の確認を行うことで、達成感も得られるので、学習を続ける上でのモチベーションの維持にもつながります。
司法書士試験の学習では、多くの予備校や講師等から勉強を頑張るのは当たり前と言われます。
その意見については私も異論はありませんし、試験合格のためにまず土台となるのは気持ちの面や学習量であると私も考えます。
ただ一方で、その頑張り方や中身ももちろん大切です。考え方や時間の使い方一つで、日々行う学習の質は大きく変わりますし、その積重ねの結果が合否に大きく影響を与えると言っても過言ではありません。
司法書士試験の日々の学習について、作業効率や集中力の面で問題を抱えている方や、より学習の質を高めていきたいと考えられている方は、こちらの記事で記したような、学習内容を「作業」としてイメージするという見方を試してみてはいかがでしょうか。